災害関連死とは
災害関連死とは何か
災害関連死とは、「災害による死」から「直接死」を除いたものを指すと言われます。
例として、次のようなケースが挙げられます。
- 避難中の車内でエコノミークラス症候群を発症して死亡
- 慣れない避難所生活から肺炎状態となり、入院先の病院で死亡
- 地震による栄養障害及び持病の悪化等により死亡
- 地震後の疲労等による心不全で死亡
実は、災害関連死という言葉に、法律上の定義はありません。
災害弔慰金の支給等に関する法律では、「市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、条例の定めるところにより、政令で定める災害(略)により死亡した住民の遺族に対し、災害弔慰金の支給を行うことができる」(第3条第1項)と定められています。
つまり、直接死か関連死かを区別することなく、「災害により死亡」した遺族に災害弔慰金が支給されると定めているのみです。また、災害から亡くなるまでの期間が限定されているわけでもありません。
したがって、災害から時間が経って命を落とした場合でも、「災害により死亡した」と認められれば、災害関連死として、遺族に災害弔慰金が支給されます。
災害弔慰金は、「死亡者が受給者の生計を主として維持していた場合」には500万円、「それ以外の場合」には250万円が、遺族に支給されます。
災害弔慰金を受け取ることのできる遺族の範囲は、一般的には、次のように条例で定められています。
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 死亡者と生計を同じくしていた兄弟姉妹
支給の順序についても、条例で次のような定めがされているのが一般的です。
- 死亡者に生計を維持されていた遺族が優先する
- 同順位の遺族がいる場合には、1~6の順位による
災害関連死の認定手続き
災害関連死の認定を受けるためには(災害弔慰金の支給を受けるためには)、受給権のある遺族が市町村(特別区を含みます)の窓口で申請をする必要があります。
窓口では、罹災証明書や戸籍謄本などの資料とともに、市町村に備え置かれた支給申請書に死亡時の状況等を記載して提出するよう求められるのが一般的です。
加えて、災害前の既往症や治療歴、災害後の通院状況や生活状況などを説明する文書を作成して提出するよう求められることも多いようです。
申請にあたっては、説明文書だけではなく、医療記録や看護記録などの資料を準備して提出した方が良い場合もあります。後で説明するとおり、「災害により死亡した」と言えるか否かの判断は容易ではなく、説明文書や資料の内容次第で、結論が変わる可能性もあります。
もし、申請にあたって不安がある場合には、申請に先立って、弁護士などの専門家に相談をして、説明方法や提出すべき資料についてのアドバイスを受けることをお勧めします。
遺族からの申請を受けた市町村は、通常は、市町村が設置する審査会に、災害と死亡の関連性の有無について諮問し、審査会において、検討がされることになります。
審査会は、医師や弁護士、学者等の審査委員によって構成されるのが一般的です。
審査会での検討を経て、災害と死亡の関連性の有無が判定され、認定・不認定の結果が遺族に通知されることになります(1回の審査会だけでは結論が出ず、追加調査がされることもあります)。
審査結果に納得できないとき
通知された認定・不認定の結果に納得できないとき、遺族は次の3つの方法で、結果を争うことができます。
⑴ 再申請
多くの市町村では、不支給の決定がされた後に、再度の申請を受け付けています。ただし、再申請にあたっては、新たな事情の説明や資料が求められることがあります。
再申請がされると、再び、市町村の審査会で検討されることになります。
⑵ 不服申立て
市町村に対して不服申立て(審査請求)をすることができます。不服申立ては、認定・不認定の結果を知った日から3か月以内に行う必要があります。
不服申立てがされると、再び、市町村の審査会で検討されることになります。
⑶ 訴訟
市町村ではなく、裁判所に対して訴訟を提起することもできます。訴訟の提起は、認定・不認定の結果を知った日から6か月以内に行う必要があります。
認定・不認定の判断をした市町村ではなく、裁判所が「災害により死亡した」と言えるか否かを、証拠に基づいて判断することになります。